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続、夫婦と和菓子 ある夫婦のストーリー

夫婦と和菓子の続編です。


緊急事態宣言で計量前日に急遽試合が中止となったある中年のプロキックボクサー。

奥様とかわいい猫3匹と暮らしています。

猫達は懐いていて、言葉を交わさなくても一匹一匹の動きなどで彼は大体のことは分かるようになってきました。
しかし、猫達よりも長く連れ添っている妻の気持ちは彼には分からない時があります。
※まぁ私もそうですが…(汗)

前回はそんな彼ら夫婦の心温まるお話でした。


そして、話は続きます。

彼は試合に向けて、延期になる前よりも勝つ確率を上げるためにまた練習に集中する日々となります。

約1ヶ月後に試合の日は訪れます。

45歳。

厳しい減量をし、規定の体重内で無事計量を突破して明日の試合に備えて身体を休めるため帰宅。

仕事を終え帰ってきた妻は和菓子好きな彼のために、明日試合で闘うパワーを与える和菓子を買ってきてくれていました。

彼はその和菓子を見ると自然と笑みが溢れてきました。


彼には「今回の試合は延期したけど気持ちを切らさず練習頑張ってたし、厳しい減量も頑張ったね!明日は頑張れっ!会場で応援してるよ」という声が聞こえた気がしました…?

その和菓子は糖分の栄養だけでなく、彼に力を漲らせる心の糖分もたっぷり含まれていたようです。

 

試合での彼は、将来が有望視される若きチャンピオンに必死で勝利を目指して立ち向かいました。

何度も何度も攻撃をもらい続けてしまうも耐え続け、倒されることなく勝利を目指しますが、肘打ちでの傷が大きくドクターが試合を止めTKO負けを喫してしまいました。



試合後、ドクターに縫合していただいた傷口を庇いながら、足を引き摺りながら、後輩の試合を応援する彼の姿がありました。

後輩は見事なKO勝利を飾りました。
その後輩を傷だらけの身体で祝福する姿を後ろから見て、この人は凄いなと私は改めて思いました。



メインの試合後、私は道具類を片付けて挨拶などをして会場を出るのが遅くなりました。
遅れて出口へ行くと彼と妻の姿がありました。

応援に来てくれた仲間達に苦しかった試合の武勇伝を手振りを交えながらオーバーリアクションで語る彼を後ろから見守る妻。

私は用事があり一旦その場を離れましたが、彼の怪我の状態や精神的に落ち込んでしまっているのではないかと心配で、再びその場に戻りましたが、既に彼と妻はその場を後にしていました。

後日そこにいた仲間から、彼と妻の会場を後にする後ろ姿にメラメラしたものが出ていて感動したとの話を聞きました。



彼と妻は喧嘩することや行き違うことがこれからも多くありそうですが、共に力を合わせて今を生きていくことでしょう!

夫婦と和菓子 完




あとがき


この試合で彼は足を骨折(蹴った足の甲)。

骨は折れても心は折れず、折れても自然とまたくっつく心があればまた頑張れる。

夫婦はケンカしてもまた自然とくっつく、心が繋がっていればまた一緒に生きていける。

彼から骨折の報告を受けた直後、ふとそんな言葉が浮かんだ。


新型コロナウイルスが落ち着いたら馴染みのスナックで少し酔いのまわった上機嫌の彼の歌うサンサーラを聴きたいと思う。

いーきてーりゅー、いーきぃてぇーいりゅーっ♪
自分がいきなり横から歌い出したら「お前が歌うんかいっ」ってツッコんでくれるかなぁ…。